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CFIUS、新法により米国対内投資の審査対象が拡大

September 12, 2018
Legal Update

CFIUS、新法により米国対内投資の審査対象が拡大

2018年8月13日、トランプ米国大統領は「外国投資リスク審査近代化法」(FIRRMA)に署名しました。FIRRMA成立によってこれまで極めて曖昧だった、米国政府が外資の対米投資を審査、制限できる方法が明示されました。FIRRMAの成立前は、対米外国投資委員会(CFIUS)による審査を踏まえ、大統領には事実上、外国企業や外国人による米国企業の合併、買収を審査する無制限の権限がありました。CFIUSが外国企業等による米国企業の買収阻止のために介入することはごくまれでしたが、非常に注目度が高く、議論を呼ぶようなケースには懸念を表明してきました。こうした審査手続きをめぐる議会の審議の結果、今回の法律はCFIUSの審査対象となる対米投資の取引を明確にし、さらに対象範囲を拡大します。米国への投資を検討している外国企業は、新法の要件を理解しておかなければなりません。

CFIUSは、国家安全保障を脅す可能性のある対米投資を審査する政府委員会です。もとよりCFIUSの主な審査対象は、外国人が米国事業の「支配権」を握る恐れのある買収案件でした。FIRRMAによって審査対象が広がり、CFIUSは、従来の外国人によって米国事業が支配される買収・合併に加え、以下のような形態の取引も審査する権限を持ちました。

センシティブな個人情報、重要インフラまたは重要技術に関わる「その他の投資」

FIRRMAでは、外国人が米国事業を「支配」しなくても(例えば、外国人が米国事業の単なる少額出資者であったとしても)、(i) 海外からの投資がセンシティブな個人情報、重要インフラまたは重要技術に関わり、かつ(ii) 外国人が受動的投資家の要件を満たしていなければ、CFIUSの審査対象になり得るとされています。外国人が受動的投資家としてみなされるためには、(x) 米国事業の重要な非公開技術情報へのアクセスがなく、(y) 米国事業の取締役会への出席権および構成メンバーの指名権を持っておらず、かつ(z) その他米国事業の実質的な意思決定プロセスに関与できないことが条件となります。また未公開株式投資ファンドによる投資については、ファンドの外国人投資家が受動的投資家として認められれば、CFIUSの審査対象から除外可能であると明記されています。

一定の不動産取引

FIRRMAにより、米国内で外国人に機密情報の収集や外国諜報活動の機会を与える恐れがあるセンシティブな場所(例えば空港、港湾、米軍施設または国家安全保障上の理由により慎重になるべき米国政府施設)に近接する不動産の取引も、CFIUSによる審査対象となります。そうした不動産取引には、外国人による不動産の購入、リースまたは外国人への不動産内での事業許可が含まれるとされています。

権利の変更

米国における既存の投資に関して外国人が有する権利の変更について、結果として外国人が米国事業の支配権を獲得し得る場合や既存の投資が前述のようにセンシティブな個人情報、重要インフラまたは重要技術を伴う「その他の投資」に相当する場合は、CFIUSの審査対象となります。

回避

FIRRMAには、CFIUSによる審査の迂回、回避を目的とした他の取引の審査を認めるキャッチオール条項も含まれています。

FIRRMAはCFIUSによる対米投資の審査対象の範囲拡大を認めるものですが、CFIUSは、今後制定される施行規則の中で審査権限のさらなる強化または制限も可能とされています。今回の法律が実際に対米投資に与える影響は、CFIUSが施行規則を発表するまではわかりません。

米国での投資プロジェクトを検討している外国企業は、できるだけ速やかに、予定されるプロジェクトがCFIUSの拡大された審査対象に含まれるかどうか判断するべきです。対象となる場合には、CFIUSの審査に伴う潜在的なリスク要因を特定し、リスクを軽減する適切な取引スキームを考えなければなりません。その上で、CFIUSへの「申告書」を(必要に応じて、正式な書面による通知も)慎重に作成し、CFIUSに提出して適切か否かの審査を受ける義務があります。